世界初のロータリーエンジン搭載4ドアセダン
ヴァンケルロータリーエンジンの本家であるNSUが送り出した、ロータリーエンジン搭載の前輪駆動ミドルクラスサルーン。497.5cc×2のロータリーエンジンは115馬力を発生。これにトルクコンバーターと、半自動の3段変速を組み合わせる。ウェッジシェイプ形状が斬新なデザインは、80年代のBMWのデザイナーとしても活躍するクラウス・ルーテによるもの。抗力係数が0.355に抑えられていたこともあり、1300kgほどの比較的重量級な車体を180km/hで走らせた。また、足回りは4輪独立懸架となっており、バネ下重量を軽減するためにインボード式のディスクブレーキを採用するなど、走りに関するメカニズムにも拘っていた。実際に走行性能は非常に高く、それが評価されて1968年にはドイツ車として初めて「ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー」に輝いた。発売当初は比較的良く売れたが、エンジン本体やトランスミッションの耐久性不足など初期の品質に問題があったため、市場での評判を落とす。その後は真摯に改良を重ねて耐久性を向上し、市場からも信頼を得て73年には年産1万台を達成。しかし同年のオイルショックは燃費的に不利なロータリーエンジン搭載モデルにとって大きな向かい風となり、翌年以降は再び大きく減産してしまう。Ro80は1977年を持って生産終了となり、これがNSUブランドの終焉でもあった。ちなみに、Ro80の普及版としてレシプロエンジンを搭載したフォルクスワーゲン K70も造られた。
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