オールズモビル F85 ジェットファイア(1962-63 アメリカ)

オールズモビル

世界初の量産ターボ車

F85はオールズモビルの中ではコンパクトカーに類するモデルで、これにはビュイック設計の新世代オールアルミエンジンが搭載されていた。1962年に登場したジェットファイアは、このエンジンに更にギャレットリサーチ製ターボチャージャーを組み合わせた”ターボロケットV8″を搭載したモデルで、世界初の量産ターボ車となった。エンジンの圧縮比は10.25:1とターボ車としては異例に高く、ノッキングを防止するために”ターボロケットフルード”と呼ばれるメタノールと蒸留水の混合液を吸気に噴射するシステムを備えた。この効果もあり、3.5L V8はターボ過給により215馬力、41.5kg-mのハイパワーを発生。0-100km/h加速は9秒を切る俊足を誇った。ビュイックのオールアルミエンジンが信頼性に問題を抱えていた事や、ユーザーのターボエンジンに対する理解不足(ターボロケットフルードの補充を怠ったことによる故障の発生)などの原因により、この先進的なターボ車はわずか2年で生産停止となってしまった。ちなみに同じGM内のシボレーコルベアモンツァにもターボ搭載モデルが存在した。

ビュイックからローバーに引き継がれたV8エンジン

文中のビュイック設計のオールアルミV8 OHVエンジンは、1960年にビュイック215として登場(215は立方インチ表記の排気量で、リットル表記だと3.5L)。既存の鋳鉄ブロックと比較し100kgもの軽量化を実現したエンジンだったが、GMは度重なる初期トラブルに加え高コストに耐え切れず、1963年にこのエンジンの生産を停止してしまう。

ビュイック215エンジン

しかし基本的な設計のポテンシャルは高く、そこに目を付けたローバーがこのエンジンの権利を買い取り、ローバーV8として再設計。こちらは大成功を収め、ローバーのフラッグシップモデルはもとより、少数生産スポーツカーの動力源としても無くてはならないものとなった。

ビュイックのV8はローバーに引き継がれて大成功する

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