アウディ 200 クワトロ トランザム(1988 米国)

アウディ

1988年、アウディが米国のSCCAトランザムシリーズに投入した200クワトロは、それまでWRCやパイクスピークで培ってきた四輪駆動技術をサーキットへと転用し、北米のモータースポーツ界に大きな衝撃を与えたマシンである。市販の高級セダンである「200」の外観を保ちつつも、その中身は過酷なレースに耐えうる純粋な競技車両へと変貌を遂げていた。

パワーユニットには、2.1L 直列5気筒SOHCターボエンジンを搭載している。最高出力は510馬力以上に達し、これをアウディ伝統のフルタイム4WDシステム「クワトロ」を介して路面へと伝達した。当時のトランザム・シリーズは、大排気量のV8エンジンを搭載した後輪駆動(FR)車が主流であったが、200クワトロはコーナー立ち上がりでの圧倒的なトラクション性能と、降雨時などの悪条件下における卓越した安定性を武器に、ライバルたちを圧倒した。

ハーレイ・ヘイウッド、ハンス=ヨアヒム・スタック、バルター・ロールの名手三人を擁したアウディ陣営は、全13戦中8勝という驚異的な戦績を収め、参戦初年度にしてマニュファクチャラーズとドライバーズの両タイトルを独占した。このあまりの強さは、翌1989年からの四輪駆動車の禁止、および「米国製エンジンのみ許可」というルール変更を招く結果となり、アウディは戦いの場をIMSA GTOクラスへと移すこととなった。セダンという一見レースに不向きな形状を用いながら、技術の力で米国のレースシーンを席巻した歴史的一台である。

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