ナッシュ メトロポリタンは、アメリカの自動車メーカーが「セカンドカー」という概念を提唱し、初めて本格的に市場投入したサブコンパクトカーの先駆けである。大型車こそがステータスであった1950年代のアメリカにおいて、あえて経済性と取り回しの良さを追求したこのモデルは、アメリカとイギリス両国の協力によって誕生したユニークな出自を持っている。
技術的・構造的な最大の特徴は、「アメリカのデザイン」と「イギリスのメカニズム」の融合にある。当時のナッシュ社(後のAMC)には小型車専用のエンジンや生産ラインがなかったため、デザインはアメリカで行い、生産とパワートレーンの供給はイギリスのオースチン(BMC)が担当した。心臓部には、オースチン A40やA50に搭載されていた1.2L(後に1.5Lへ拡大)の直列4気筒「Bシリーズ」エンジンを採用。これに3速MTを組み合わせ、巨体ひしめくアメリカの公道を軽快に走るコンパクトカーとして親しまれた。
デザイン面では、当時のナッシュ車の特徴であった「クローズドホイールアーチ(前輪を覆い隠すフェンダー)」や、華やかなツートーンカラー、そしてリアに背負ったスペアタイヤなど、アメリカン・フルサイズカーをそのまま縮小したような愛らしいスタイリングを実現。当初は「女性向けの買い物車」や「通勤用のセカンドカー」としてマーケティングされたが、その経済性の高さから累計約9万5,000台が販売されるスマッシュヒットを記録した。

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