ルノー ラグナ クーペ(2008-2015 フランス)

ルノー

2008年のカンヌ国際映画祭で鮮烈なデビューを飾った「ラグナ クーペ」は、3代目「ラグナ」をベースにしたルノーのフラッグシップグランドツーリングカーである。2007年のフランクフルトモーターショーで発表された「ラグナ クーペ コンセプト」を忠実に再現したこのモデルは、アウディ A5やBMW 3シリーズ クーペといった欧州のプレミアム勢に対抗すべく投入された。日産との協力関係のもと、ムラーノやティアナなどと共通性のあるDプラットフォームを採用していたのも特徴である。

パワーユニットには、日産製「VQ35DE」をベースとした3.5L V型6気筒自然吸気(240馬力、330Nm)、3.0L V型6気筒「dCi」ディーゼルターボ(235馬力、450Nm)を筆頭に、2.0Lのガソリンターボおよびディーゼルターボも設定された。最大の技術的ハイライトは、ルノースポールが開発に関与した「4コントロール」と呼ばれる四輪操舵(4WS)システムである。これは車速に応じて後輪を前輪と同位相または逆位相に最大3.5度まで操舵するもので、大柄なボディからは想像できないほどの俊敏な旋回性能と、高速域での圧倒的な安定性を両立させていた。

デザインはパトリック・ル・ケモンの指揮によるもので、とりわけリアセクションの造形は「アストンマーチン」を彷彿とさせると賞賛された。流麗なルーフラインから緩やかに続くテールランプはLEDを採用し、水平基調の意匠がワイド&ローな構えを強調している。室内空間はセダン譲りの機能性を維持しつつも、上質なレザーやアルミニウム素材が惜しみなく使用され、フランス車らしいエスプリの効いたラグジュアリーを演出。音響面では「Bose」社と共同開発した専用オーディオシステムが搭載され、グランドツーリングに相応しい上質な静粛空間を実現していた。

2015年の生産終了まで、ラグナ クーペはその美しさと「4コントロール」による走りの質感で高い評価を受けたが、クーペ市場の縮小やSUVへの需要シフトにより、直接の後継モデルを持つことはなかった。しかし、本車で磨かれた4WS技術は、後の「メガーヌ R.S.」や「タリスマン」へと継承され、ルノーの走行性能におけるアイデンティティを形成する重要な礎となった。

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