アメリカのアイゼンハワー大統領は、1953年の国連総会で「Atoms for Peace」と呼ばれる歴史的演説を行った。1950年代は原子力の平和利用に対する期待が世界的に高まっていた時期だった。自動車業界も例外ではなく、フォードは1957年に「ニュークレオン」という原子力自動車を考案した。最大の特徴は、動力源として車体後部に小型の原子炉を搭載する点である。核分裂反応により得られた熱で蒸気タービンを回し、これを駆動と発電に使用する構想だった。この車の燃料供給は原子炉の動力モジュール交換を想定しており、1度の交換で8,000km以上走行することが可能とされた。ニュークレオンの実車は製作されなかったが、スケールモデルのモックアップはヘンリー・フォード博物館に展示されている。1950年代に自動車業界がどのような未来を見据えていたのかを感じ取る上では興味深いモデルである。

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