サーブ ランチア 600(1980-82 スウェーデン)

サーブ

1980年に登場したサーブ ランチア 600は、スウェーデンのサーブがラインナップの拡充を目的として、ランチア デルタのバッジエンジニアリングによって導入したモデルである。基本設計はジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインによるデルタそのものであるが、販売にあたっては北欧の過酷な気候に耐えうるべく、サーブ独自の厳しい基準に合わせた複数の技術的改良が施された。

暖房システムにおいては、イタリア仕様の標準品では対応できなかった極寒時の居住性を確保するため、より大容量なヒーターコアへの換装が行われた。また、キャブレターのアイシング(氷結)を防ぐための予熱システムや、サーブ車では必須とされたシートヒーターの標準装備、ヘッドライトウォッシャーの追加など、北欧仕様としての体裁が整えられている。さらに、融雪剤による腐食を防ぐため、工場出荷時および現地到着時に追加の防錆処理が徹底して施されていた。

この時期のサーブとフィアットグループ(ランチアの親会社)の協力関係は、600の導入のみに留まらず、販売網の共用においても多角的に展開されていた。その象徴的な例が、アウトビアンキが生産していたコンパクトカー「A112」である。このモデルも、スウェーデンを含む多くの輸出市場ではランチアブランドへの統合が図られており、「ランチア A112」の名でサーブのディーラーネットワークを通じて販売されていた。これにより、サーブは自社製品の下位セグメントを、ランチア製の二つの異なるモデルで補完する体制を構築していた。

しかし、これらの入念な対策を講じたにもかかわらず、デルタ本来の設計に起因する電気系統の脆弱性や耐食性は、北欧の冬の前では十分とは言い難かった。価格設定の高さも災いし、販売台数は期待を下回ったが、この提携を通じて得られたイタリアンデザインとスウェーデンの実用基準の融合という課題は、後の「ティーポ4プロジェクト」におけるサーブ 9000の開発において重要な教訓として活かされることとなった。

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