1990年代初頭、GMブランドのGMCは従来の概念を覆す「サイクロン」と「タイフーン」を投入した。1991年に登場した2ドアピックアップのサイクロンは、コンパクトピックアップのGMC ソノマをベースとして仕立てられたハイパフォーマンスモデルであった。サイクロンは同年に生産を終了。これと入れ替わるように、翌1992年には同一メカニズムを継承した3ドアSUVのタイフーンが登場した。実用車をベースに一級の走行性能を備えた両モデルは、新たな高性能車の形を提示した。
両車の核心は過激なパワートレーンにある。4.3リッターV6に三菱重工製TD06-17Cターボチャージャーとギャレット製水冷インタークーラーを組み合わせ、最高出力280馬力、最大トルク48.4kgmを発揮。トランスミッションには当時のコルベットから流用、強化された4速ATを採用した。フルタイムAWDにより、サイクロンは0-60mph加速4.3秒を記録し、ミドシップのスーパースポーツをも凌駕する「テスタロッサキラー」と称された。
強力なパワーを受け止める足回りには、両車ともに16インチの専用ホイールに245/50R16サイズの高性能タイヤとビルシュタイン製ショックを採用。さらにタイフーンにはリアの車高を自動補正するセルフレベリング機能も備わり、実用性を高めた。一方で最高速度には制約が存在し、車体の空力特性や駆動系の耐久性などを考慮したメーカーの自主措置として、リミッターにより126mph(約203km/h)に制限されていた。
実用的な車体に強力なターボとAWD、専用の足回りを組み上げたこの2台は短期間で生産を終えた。しかし、その過激な性能は当時のスポーツトラックやハイパフォーマンスSUVの頂点に君臨するものであり、「テスタロッサキラー」の異名とともに、今なお自動車史に深く刻まれている。

サイクロンは1991年限りのモデルとなったが、その後継として「ソノマ GT」が登場した。こちらは、外観や内装こそサイクロンのスポーティなスタイルを踏襲していたが、メカニズムは大きく異なっていた。エンジンは自然吸気の4.3リッターV6(195馬力)を搭載し、駆動方式もAWDから後輪駆動(RWD)へと変更。より手頃で現実的なスポーツトラックとして提案された。生産台数はわずか806台と本家以上に希少である。

クリント・イーストウッドも愛したタイフーン
GMCタイフーンの実用性とパフォーマンスに魅了された著名人のひとりに、クリント・イーストウッドがいる。彼はこの車をとても気に入り、日常の足として長年愛用していた。アメリカの人気トーク番組に出演した際にも、タイフーンのV6ターボエンジンが持つ俊敏さを熱っぽく語るなど、その愛着は本物だった。また、自身が監督・主演を務めた映画『目撃(原題:Absolute Power)』にもタイフーンが登場している。

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