1965年10月に登場した「フォード トランジット」は、英独フォードの共同開発プロジェクト「レッドキャップ」から誕生した小型商用車である。英国のテムズ400Eと西ドイツのタウヌス トランジットを統合する後継車として企画された。両国の拠点を結びつけた欧州フォード統合の先駆けであり、広大な荷室容積と乗用車に近い操作感覚を両立させた設計を特徴とする。
車体は当時の商用車で主流だったセパレートフレームではなく、高剛性なモノコック構造(ユニボディ)を採用。短いボンネット内に原動部を収めるFRレイアウトと幅広なトレッドにより、規格パレットの積載が容易な低床フラットフロアを実現した。前後サスペンションには頑強なリーフスプリングとリジッドアクスルを組み合わせ、高い耐久性を確保した。
動力源には、短いノーズに収めるため全長の短いV型4気筒ガソリンが選ばれた。英国仕様にはエセックスV4、独国仕様にはケルンV4を搭載。直列ディーゼルを収める突出型ノーズ(通称ブルノーズ)は1965年のパーキンス製搭載車で採用され、1972年にヨーク製へ更新された。1971年には警察用や特装向けに3.0リッターのエセックスV6も追加された。
多彩な車体仕様を展開し、広範な産業で支持を獲得。1972年に英ロンドン警視庁が「国内の銀行強盗の95%に使われている」と言及するほど、優れた積載性と俊敏性を示した。実用バンとしての高い信頼性と機動性を具現化し、欧州商用車の標準規格を確立した名作として、半世紀以上続くシリーズの礎を築いた。

画像ギャラリー











