サーブ 92(1949-1956 スウェーデン)

サーブ

航空機メーカーのスヴェンスカ・アエロプラン(SAAB)が、戦後の民生用乗用車市場への進出を期して開発した量産第1号モデルである。開発主任のグンナー・リュングストロームと工業デザイナーのシクステン・サソンが中心となり、試作車「ウルサーブ」を経て1949年末に量産を開始。航空工学の知見を注ぎ込んだ滑らかな流線型の車体は極めて優れた空力特性を誇り、量産市販車として当時世界最高水準となる空気抵抗係数(Cd値0.35)を達成した。

前輪駆動の駆動方式を採用し、車体前方に横置き搭載された動力源は水冷直列2気筒2ストロークの764ccである。初期仕様では25psを発揮し、3速マニュアル変速機と組み合わされた。2ストローク特有の減速時における焼き付きを防ぐためフリーホイール機構を装備。雪道や悪路での確実な駆動力を武器に、過酷なラリー競技においても優れた走破性を実証した。

強固なモノコック構造の車台にはトーションバーを用いた4輪独立懸架を配置。初期型は車体剛性の確保と構造簡素化を最優先とし、外部から開閉できるトランクを持たず、後部座席側から荷物を出し入れする構造であった。車体色も軍用機の余剰塗料を活用した濃緑色に限られていたが、1953年に登場した改良版「92B」では外部開閉式のトランクリッドが新設された。さらに後方視界を改善すべく後部窓の面積が大幅に拡大され、28psへの性能向上や新たな車体色の追加が図られた。

1956年までに約2万台が生産され、3気筒化された発展型「93」へとバトンを渡した。航空機開発で培われた合理的な機能美、卓越した空力設計、そして北欧の厳しい気候に耐えうる堅牢な車体作りは、その後のサーブ車が確立する独自の工学思想の原点として高く評価されている。

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