アウトビアンキ ステリナ(1963-1965 イタリア)

アウトビアンキ

1963年のトリノ・モーターショーでプロトタイプが初公開され、翌1964年に発売された「アウトビアンキ ステリナ」は、イタリア製市販車として初めてFRP(ガラス繊維強化プラスチック)ボディを採用した小型2座スパイダーである。ルイジ・ラピが手がけた端正かつ愛らしいスタイリングは、耐腐食性と成形の自由度を追求した先進的な試みであり、新技術の実証実験を担っていたアウトビアンキの性格を明確に示していた。

車体構造は、箱型断面の鋼板製フロアパンにFRP製外板を接着・締結するハイブリッド構造を採用。ただしFRP外装自体は錆びないものの、土台となる鋼板フロアは当時の防錆技術の限界もあり腐食しやすいという弱点も抱えていた。心臓部には「フィアット600D」から流用された水冷直列4気筒OHV 767ccユニットを車体後部に搭載し、ウェーバー製シングルキャブレターにより31.5psを発生。4速マニュアルを介して後輪を駆動し、最高速度は115km/hに達した。

懸架装置は前輪に横置きリーフスプリングとウィッシュボーン、後輪にセミトレーリングアームとコイルスプリングを配した4輪独立懸架とし、4輪油圧式ドラムブレーキを装備。FRPの恩恵により車両重量約660kgという軽さを達成し、控えめなパワーながらも優れた操縦性と軽快な身のこなしを実現していた。さらにモデル末期には、排気量を792ccに拡大して性能を向上させた「ステリナ800」も追加設定されている。

意欲的な新素材の採用を果たしたものの、手作業に頼るFRP成形による高額な車両価格が量産の壁となった。さらに1965年には、親会社であるフィアットからより安価で洗練された鋼板ボディを持つ「フィアット850スパイダー」が登場したことで市場での実質的な役割を終える。生産数は前期型343台、後期型の800が159台の計502台にとどまり短命に終わったものの、自動車用複合素材の実用化を切り拓いた先駆車として名高い。

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