1991年に発表された「ライトカーカンパニー ロケット」は、名設計者ゴードン・マーレイと元レーシングドライバーのクリス・クラフトの手によって生み出された超軽量スポーツカーである。1960年代の葉巻型フォーミュラマシンが持つ簡素な機能美を公道で再現することを構想。中央に運転席を配し、その後方に同乗者席を直列に収めるタンデム2座のレイアウトを採用し、後席カバーを装着することで単座レーシングカーのような純粋な外観を呈した。
骨格には入念に組まれた鋼管スペースフレームを用い、外板には極めて薄肉のグラスファイバー複合材を採用。独立したサイクルフェンダーを備えたオープンホイール構造を採り、無駄な装備を削ぎ落とした結果、乾燥重量は約380kg(車両重量約400kg前後)という驚異的な数値を達成した。足回りには前後ともにプッシュロッド式のダブルウィッシュボーンを備え、インボード配置されたダンパーによって正確な接地性と優れた運動性能を確保した。
動力部には、ヤマハ製大型二輪「FZR1000」の1.0リッター(1,002cc)並列4気筒DOHC 5バルブユニットをミドシップに搭載。10,000rpmを超える高回転域まで鋭く回り、標準仕様で143hpを発生する。二輪用シーケンシャル変速機構の後方にワイズマン製の特製トランスファーを連結することで、高低2段の副変速比と後退機能を付加。前進10段および後退5段の変速段数を備える極めて独創的な駆動系を構成した。
圧倒的な軽さと高回転型ユニットの組み合わせは、静止状態から時速100kmまで約4秒台で達する加速性能と、物理的慣性をほとんど感じさせない純度の高い操舵感覚をもたらした。手作業による少量生産ゆえに総生産数は約50台規模にとどまったものの、贅肉を削ぎ落として運動性能を研ぎ澄ますというマーレイの哲学を極限まで具現化した一台として、自動車史に確かな足跡を残している。

こちらは自らロケットのテスト走行に臨むゴードン・マーレイ。背後には彼の当時の愛車であるホンダNSXも見える。マーレイは理想のロードカーとしてNSXの名を挙げ、マクラーレンF1の開発の際には大いに参考にしていた。

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