1967年にブルクシュタルで創業したAMGが、メルセデスベンツの最上級セダン「300SEL 6.3」をベースに開発した初期の公道向け高性能モデルである。創業者ハンス・ヴェルナー・アウフレヒトとエアハルト・メルヒャーは、同型車向けに290psと320psの2段階のチューニングを用意。エンジンルーム外観は純正状態とほとんど変わらない姿を保ちながら、外装の装飾を排した控えめなセダンスタイルに驚異的な運動性能を秘めさせた。
動力部には、排気量6,329ccのV型8気筒SOHC「M100型」を採用。交換用シリンダーヘッドには拡大・研磨された吸排気ポートと燃焼室加工が施され、加工ロッカーアームや専用バルブスプリング、研磨加工されたインテークマニホールドを装備。マーレ製ピストンにより圧縮比を9.0:1から9.9:1へ高め、ハイリフトカムシャフトを組み合わせた。これにより標準の250psから70ps増の320ps(4,750rpm)を達成し、最大トルクも55.2mkg(3,500rpm)へと向上させた。
駆動系には自社製4速オートマチック変速機を継続採用。空気ばね懸架にビルシュタイン製ダンパーを組み合わせ、わずかな車高調整を実施した。自動車専門誌『auto motor und sport』のテストでは、車両重量1,868kgの車体ながら、実測で0-100km/h加速6.7秒、1km静止発進加速25.7秒、最高速度235.4km/hを記録。ただしテスト車は差動制限装置が未装備だったため、旋回加速時に内側駆動輪が激しく空転して白煙を巻き上げる過激な一面も見せた。
エンジン改修費用は約6,900マルクで、脱着工賃やベンチテスト費用を含めた完成車価格は約55,000マルクに達した。しかし、7万マルク超のフェラーリ 365GT 2+2やマセラティ ギブリと同等の直線加速を実用的なセダンで実現した意義は大きかった。競技専用の「6.8」とは異なり、日常の快適性を損なうことなく高性能を付与した、初期AMGの公道向け開発手法を象徴する一台である。
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