オーテック ザガート ステルビオ(1989-1991 日本・イタリア)

ザガート

1989年に発表された「オーテック ザガート ステルビオ」は、日産自動車の特装車部門を担うオーテックジャパンと、イタリアの名門カロッツェリアであるザガートが共同開発した高級クーペである。プロジェクトを率いたのは、オーテックジャパンの社長を務めていた桜井眞一郎であった。車名は48カ所のヘアピンカーブが連続するイタリア・アルプスの難所「ステルビオ峠」に由来し、峻険な山岳路を力強く駆け抜ける高性能ツアラーへの想いが込められた。ベース車両には日産のF31型「レパード」が選定された。

生産工程は、日本から送られたレパードのプラットフォームに対し、ミラノのザガート工房で手作業のアルミ叩き出しパネルとカーボン材を組み合わせた車体を架装する手法が採られた。スタイリング上の大きな特徴は、前輪フェンダーの隆起部分にサイドミラーを内蔵させた独創的な造形である。ルーフにはザガートの象徴であるダブルバブル形状が与えられ、ホイールには制動系の冷却を促すNACAダクトが刻まれた。内装もイタリア製の上質な天然皮革で仕立てられた。

動力部には、排気量2,960ccのV型6気筒DOHCセラミックターボ「VG30DET」型を搭載。オーテック独自の専用チューニングが施され、カムプロファイルの変更や過給圧制御の見直しによって(280ps、41.0 kgm)を発揮した。組み合わされる変速機は4速オートマチックで、後輪を駆動する。低回転域から湧き出る豊かなトルクを活かし、重厚な高速巡航性能を追求した設計がなされた。

日伊の技術と美意識を結集させた意欲作であったが、1,870万円という高価格やバブル経済崩壊の余波を受け、計画された200台に対して実際の生産は100台強にとどまった。量産モデルの枠を超え、技術者の理想とカロッツェリアの造形美を妥協なく融合させた特異なクーペとして、自動車史に独自の足跡を残した。

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