シトロエン 2CV プロトタイプ(1939 フランス)

シトロエン

1930年代半ば、シトロエンの経営を率いたピエール・ブーランジェの主導により、フランス農民の近代化を目的とした小型大衆車開発「TPV(超小型車)」計画が始動した。悪路を卵を割らずに走破し、4名と50kgの農作物を積んで時速60kmで巡航できることという明確な条件を設定。航空機工学に精通した技師アンドレ・ルフェーヴルと造形作家フラミニオ・ベルトーニが手を組み、虚飾を完全に排除した純粋な実用車の具体化が進められた。

1939年のパリ・サロンでお披露目される予定だった試作車群は、極限の合理化が図られていた。車体には波板状のアルミニウム合金を多用し、天井には簡素なキャンバストップを採用。コストと重量を徹底的に削るため、前照灯は当時の法規要件であった左側1灯のみとされ、座席も天井から吊り下げられた布張り構造であった。動力部には水冷水平対向2気筒ユニットを前部に搭載し、前輪駆動と前後連動式の独創的な懸架装置が組み合わされた。

しかし同年9月、第二次世界大戦の勃発によってサロンは中止を余儀なくされる。フランス侵攻を進めるドイツ軍による技術接収や軍事利用を恐れたブーランジェは、製造されていた約250台の試作車の完全破棄を厳命した。だが、開発陣の熱意と反骨心は設計の抹消を受け入れず、一部の関係者が軍の監視をかいくぐり、解体を装いながら数台を試験場の屋根裏や地方拠点の奥深くへ密かに隠匿。戦火と敵の目から奇跡的に守り抜かれた。

終戦後、動力部を空冷式へと刷新するなどの改良を経て、1948年に量産型「2CV」が正式発表された。秘匿された戦前型試作車は長らく幻の存在とされていたが、1994年にラ・フェルテ=ヴィダム試験場の納屋の屋根裏から、壁に塗り込められていた3台が半世紀ぶりに発見され世界を驚かせた。極限の機能主義と戦火を生き延びた技術者の執念を今に伝える、歴史的な文化遺産である。

第二次世界大戦中、シトロエン2CVの原型となったプロトタイプは納屋の屋根裏部屋に隠されていた。それらが再発見されたのは1994年のことだった。これはその時に発見された3台の2CVプロトタイプである。

画像ギャラリー

タイトルとURLをコピーしました