BMW 8シリーズ(1989-1999 西ドイツ/ドイツ)

BMW

1989年のフランクフルト・モーターショーで発表された「BMW 8シリーズ(E31型)」は、最先端の電子工学と洗練された空力特性を融合させた大型ラグジュアリークーペである。先代にあたる6シリーズから車格を一段引き上げ、ブランドの旗艦GTとして開発された。格納式のリトラクタブルヘッドライトを備えた低いノーズと、Bピラーを排した伸びやかなサイドウィンドウが特徴であり、空気抵抗係数(Cd値)は0.29という卓越した数値を達成した。

動力部には、新世代のフラッグシップにふさわしい排気量4,988ccの水冷60度V型12気筒SOHCユニット(M70型)を採用。電子制御スロットルを備え、300psのパワーを発揮した。V12ユニットに6速マニュアル変速機、もしくは4速オートマチックを組み合わせ、滑らかかつ力強く後輪を駆動。のちには4.0Lおよび4.4LのV8ユニットを積む「840Ci」や、BMW M社が手がけた5.6L V12(380ps)を搭載する高性能版「850CSi」もラインナップに追加された。

車体設計には当時としては先進的なCAD技術が全面的に投入され、高い曲げ・ねじり剛性を誇るボディシェルを実現。足回りには後部に先進のマルチリンク式「Zアクスル」を備え、電子制御ダンパー(EDC)や横滑り防止機構(ASC+T)、さらに上級グレードには後輪操舵システム(AHK)を導入するなど、走行安定性を高める電子制御が網羅された。また、Bピラーを持たない構造に対応するため、シート内蔵型シートベルトが導入されるなど乗員保護性能も追求された。

1989年から1999年までの10年間で3万台余りが生産された。デビュー直後に直面した世界的な景気後退や湾岸戦争による市場の冷え込み、そして高額な車両価格の影響を受け、販売面では苦戦を強いられたものの、当時の自動車工学が到達した最先端技術の粋を集めたグランドツアラーとして高く評価された。優美なスタイリングと先進的な電子制御技術を融合させた造形美は、後世のBMW製ハイエンドモデルへ多大な影響を与え続けている。

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