日産 パルサー GTI-R(1990-95 日本)

日産

日産がWRC制覇のために産み出したラリーウエポン。コンパクトな1.5Lクラスの前輪駆動車をベースに2.0Lターボ+4WDを詰め込む試みは、日本車としては初めてのものだった。搭載されるエンジンは2.0L 直4 DOHC 16バルブターボのSR20DETをベースに、GTI-R用に特別に改良を施されたSR20DET(改)。WRCでの過酷かつ連続的なハイパワードライブに対応するため、4連スロットルやナトリウム封入排気バルブ、クーリングチャンネル付きピストン、大径のギャレットT3ターボチャージャーなどを奢る。空冷の大型インタークーラーはエンジン上に搭載、プラグ交換のメンテナンス性よりもパフォーマンスを重視した。また、その冷却能力を確保するためにエンジンフード上に巨大な開口が設けられた。これらの効果として230馬力、29.0kg-mの高出力を得た。4WDシステムは日産独自の4輪駆動力最適制御システムのアテーサを搭載しアンダーステアを改善。肝心のWRCではインタークーラーの冷却不足に伴うパワー低下という弱点が露呈。そしてその課題を解決して行く矢先に景気後退の煽りを受けて、参戦わずか2年でのWRC Gr.Aカテゴリーからの撤退が決まってしまうなど、パルサー GTI-Rは悲劇の車として語られることが多い。しかし、WRCのGr.Nカテゴリーや全日本ラリー選手権ではタイトルを獲得するなど、ラリーウエポンとして生を受けたその素性は決して間違ったものではなかった。

日産 パルサー GTI-R:全長3,975mm
ランチア デルタ HFインテグラーレ エヴォルツィオーネ:全長3,900mm

セリカもギャランもレガシィも、2.0Lターボ4駆を得るも車格の壁を越えられずに車体が大柄だった。ファミリアも車格の壁を越えられずこちらは排気量が小さかった。その垣根を越えて小柄なボディに2.0Lターボ4駆を詰め込み、日本車として初めてデルタと同じ舞台に上がった車が、実はパルサーGTI-Rだった。

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