夢のようなツインタイヤの誕生
ポルシェのファクトリードライバーであったヤロスラフ “ジェリー” ユハンは、エイボンやスピードラインなどとの協力のもと、理想のタイヤセットの販売にこぎつけた。それはJJDツインタイヤと呼ばれるもの。2つの幅の細いタイヤを1つのホイールにセット。これにより十分な接地面を確保しつつ、2輪の中央の隙間により優れた排水性能を発揮。高速時のハイドロプレーニング耐性が大幅に向上し強力なウエットグリップを得た。そのメリットは明確ではあったが、高価な専用ホイールを用意する必要があり、バネ下重量も重くなる欠点を持っていた。広告による露出も少なかったことから普及には繋がらなかった。
コンセプトを踏襲したタイヤメーカー達
JJDツインタイヤは一般に普及こそしなかったが、そのウエット性能は魅力的なもので、のちにコンセプトを踏襲したタイヤもいくつか登場した。グッドイヤーのアクアトレッド、コンチネンタルのアクアコンタクトなどは大きな中央溝を設けており、これにより優れた排水性能を確保していた。
NSX専用ツイントレッドタイヤ “ポテンザ TT-01”
ホンダNSXは1995年のマイナーチェンジで、カスタムオーダープランのオプションにブリヂストンと共同開発を行ったツイントレッドタイヤの “ポテンザ TT-01” を設定した。ミドシップであり前輪荷重が軽くハイドロプレーニング耐性の低いNSXの欠点を改善するために開発されたタイヤであり、高いウエット性能を持っていた。従来の他社製ツイントレッドタイヤとは異なり、中央溝はトレッド面だけではなくベルト構造にも及んでおり、これによりトレッド摩耗が進んだタイヤライフ後半でも十分な排水性能を確保していた。また、ニュルブルクリンクの走り込みによりドライ性能も磨かれており、ドライとウエット性能が高次元で両立したタイヤとなっていた。