過去に縛られない先行開発部門として設立されたBMWテヒニク社のコンセプトの中で、実際に市販化にこぎつけた先進的なオープンモデルがBMW Z1だった。このZ1のデザインを手掛けたハーム・ラガーイは、Z1をベースとしたパイクスピークヒルクライム参戦用マシンを構想した。搭載されるエンジンは、BMWがブラバムチームで使用していたM12/13型の1.5L 直4ターボを想定。800馬力とも1000馬力とも言われるハイパワーは、山頂に近づくほど空気が薄くなりモアパワーが必要となるパイクスピークに打ってつけだった。Z1のボディワークはシングルシーター化され、太いタイヤを覆うためのブリスターフェンダーを与えられた。また、十分なダウンフォースが得られるようフロント周りは改修を受け、大きなリアウイングも装備された。しかし、このマシンはモックアップの製作に留まり、実現することはなかった。

BMW Z1のデザインを手掛けたハーム・ラガーイは、元々ポルシェのデザイナーとして924のデザインなどに従事。BMW Z1のデザインに関与したあとの1989年には再びポルシェのデザイナーとして復帰し、968、ボクスター、996、そしてカレラGTなどを手掛ける事となる。もし彼が、1989年以降もBMWに在籍していたならば、もしやするとこのZ1がパイクスピークを駆け抜けるという別の世界線もあったのかもしれない。

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