1969年に登場した「フィアット 128」は、現代の小型前輪駆動車における基本配置を決定づけた歴史的な大衆車である。天才設計者ダンテ・ジアコーサの指揮のもと開発され、横置きエンジンとトランスミッションを一直線に並べる画期的なレイアウトを確立。それまでの小型前輪駆動車に見られた二階建て構造などの複雑さを解消し、圧倒的な車内空間の広さを実現した。1970年にはヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど、世界中の自動車産業に計り知れない影響を与えた。
この革新的な前輪駆動構造は、傘下のアウトビアンキ社を通じて綿密な事前検証が行われていた。フィアットは新構造の量産リスクを回避するため、1964年登場の「アウトビアンキ プリムラ」に横置きエンジンと直列配置トランスミッション、左右不等長ドライブシャフトの組み合わせを先行導入。プリムラによる市場での実証と成功を経て熟成された駆動システムが、満を持して主力小型車である128へ全面的に採用された経緯を持つ。プリムラという実験的な助走期間があったからこそ、128の高い信頼性と完成度が担保された。
心臓部には、名手アウレリオ・ランプレディ設計による1.1リッター直列4気筒SOHCユニットを搭載。大衆車としては極めて先進的なタイミングベルト駆動を採用し、高回転域まで軽快に回って55psを発生した。足回りには前部にマクファーソンストラット、後部に横置きリーフスプリングを用いた四輪独立懸架を採用。さらに多彩な派生モデルが展開され、1.3リッターユニットを積む高性能版「128ラリー」や、優美な「128クーペ」、ハッチバックを備えた「128 3P」が登場した。この駆動系一式を車体後部へ移設することで、ミドシップスポーツ「X1/9」が誕生した点も特筆に値する。
車体容積の約80パーセントを乗員と荷室に充てるジアコーサ方式は、後にフォルクスワーゲン・ゴルフをはじめ世界各国の小型車が模倣する標準的な設計思想となった。基本性能の高さと実用性から世界各地で支持を集め、1985年までの長期にわたり生産を継続。アウトビアンキでの試行錯誤を結実させ、現代に連なる近代的前輪駆動ハッチバックや小型セダンの礎を築いた不朽の名作として、自動車史に燦然たる足跡を残している。

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