フィアット X1/9(1972-1989 イタリア)

フィアット

1972年に登場した「フィアット X1/9」は、量産車の機構を巧みに応用し、手頃な価格で卓越した操縦性を実現した小型ミドシップスポーツである。カロッツェリア・ベルトーネのマルチェロ・ガンディーニが造形を手がけ、強固なロールバーを備えたタルガトップ構造と先鋭的なウェッジシェイプを採用。高価なスーパーカーの特権であったミドシップを広く大衆へと開放し、世界的なヒットを記録した記念碑的モデルとなった。

車体構造の根幹には、ダンテ・ジアコーサが「アウトビアンキ G31」で提示した思想が息づいている。G31で試作実証された大衆車の駆動系を座席後方に移設する論理を受け継ぎ、量産前輪駆動車「フィアット 128」のユニットを全面的に流用。アウレリオ・ランプレディ設計による1.3リッター直列4気筒SOHCユニットとトランスアクスルを車体中央へ横置き配置し、後輪を駆動させる横置きミドシップ方式を成立させた。このユニットは高回転域まで滑らかに吹け上がり、75psを発生して軽量な車体を活発に走らせた。

アメリカの厳しい衝突安全基準を見据えて強靭なモノコック骨格が構築され、低重心かつ理想的な前後重量配分を獲得。取り外したルーフパネルを前部荷室にすっきりと格納できる設計とし、エンジン後方にも独立したトランクを備えるなど、スポーツカーでありながら極めて高い実用性を確保した。前後独立懸架サスペンションと四輪ディスクブレーキが組み合わされ、扱いやすいパワーと相まって極めて軽快かつ正確な旋回性能を発揮した。

1978年には排気量を1.5リッターへと拡大した新ユニットが与えられ、発生値は85psへと引き上げられるとともに5速マニュアルが組み合わされた。フィアットによる生産終了後もベルトーネ社への生産移管を経て1989年まで長きにわたり愛され続けた。G31が蒔いた大衆車流用ミドシップの種を、128の信頼性と大量生産技術によって結実させたX1/9は、小型スポーツカー史において今なお色褪せない名作として輝き続けている。

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