イノチェンティ ミニ 90/120(1974-1982 イタリア)

イノチェンティ

1974年10月のトリノモーターショーで発表された「イノチェンティ ミニ 90/120」は、英国レイランド傘下にあったイタリアのイノチェンティ社が、旧態化しつつあったミニの近代化を図って送り出した3ドアハッチバックである。車体造形はカロッツェリア・ベルトーネのマルチェロ・ガンディーニが担当。従来のクラシカルな曲面基調から完全に脱却し、大型の跳ね上げ式後部扉を備えた直線的で幾何学的な2ボックス造形へと刷新した。

全長約3,120mmという極小の体躯を保ちながら、ホイールベースは原型の約2,040mmを踏襲。前後の鋼製サブフレームやラバーコーン式懸架装置といった伝統の基本構造を底面に継承しつつ、角型前照灯や大型樹脂バンパーを配した現代的な外観を与えた。後部に開口部の広いハッチドアを組み込んだことで荷室の積載性と日常での利便性が向上し、1970年代の欧州小型車市場に即した実用性を獲得した。

動力部には、実績あるBMC由来の直列4気筒OHV「Aシリーズ」ユニットを前部に横置きで搭載。変速機をオイルパン内部に収める特有の駆動配置を忠実に受け継いだ。標準版の「90」には998ccユニット(43ps)、上級版の「120」には1,275ccユニット(65ps)を配分。1976年にはアレッサンドロ・デ・トマソ体制下で専用グリルや太いタイヤを備えた高性能版「デ・トマソ」も投入され、俊敏な走りを維持した。

1970年代半ばの英国レイランド破綻に伴い、デ・トマソ陣営への経営権移行を経験しながらも、イタリア国内外で堅調な需要を獲得。1982年にレイランド製動力部の供給終了を迎えると、日本のダイハツ製3気筒ユニットへと換装されながら息の長い生産が続けられた。英国由来の機械設計とイタリアの造形センスを融合させ、旧型車の基本骨格を新たな時代へと延命・適応させた合理的な再構築モデルである。

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