1982年、英国レイランドからの供給終了に伴い、アレッサンドロ・デ・トマソ率いるイノチェンティは日本のダイハツ工業とエンジン供給提携を締結。「ミニ 3(トレ・チリンドリ)」として新たな出発を切った。アレック・イシゴニスが生み出した伝統の車台骨格に、日本の量産小型ユニットを融合させる国際的な提携は、旧態化が進んでいたモデルに新たな延命の活路を開いた。
従来のオイルパン内蔵型変速機に代わり、ダイハツ製ユニットと直結する5速マニュアル変速機を導入。これに伴い前部骨格の大規模な改修が施され、長年用いられたラバーコーン式に代えてマクファーソンストラット式懸架装置が前部に組み込まれた。この改修により乗り心地と直進安定性が向上。ベルトーネが手がけた角型意匠の外観を基調としながら、現代的な小型車としての実用性を底上げした。
1983年末には、過給機を備えた高性能版「イノチェンティ デ・トマソ・ターボ」が登場。ダイハツ・シャレード由来の排気量993cc直列3気筒SOHC「CB60型」ユニットにIHI製ターボチャージャーを組み合わせ、72psの動力を発生した。車両重量約710kgという軽い車体と相まって俊敏な走行性能を発揮。専用エアダム付きバンパーや前面フォグランプ、専用意匠のステアリングなどを装備し、小型スポーツモデルとして独自の存在感を示した。
その後も自然吸気仕様の展開や排気量を縮小した仕様、さらにはホイールベースを延長した「990」など多彩な発展を継続。1990年のフィアット傘下入りを経て、1993年にミラノ・ランブラーテ工場が操業を停止するまで生産が続けられた。英国由来の基本骨格にイタリアの車体造形、そして日本の高効率な動力技術を重ね合わせ、構造的な制約を乗り越えて長寿を全うした異色の国際協業モデルである。

関連ブログ

画像ギャラリー








