1964年10月、経営難に陥ったルネ・ボネ社を外板成形を担当していた航空宇宙企業マトラが吸収し、自動車部門「マトラ・スポーツ」を発足。「マトラ・ボネ ジェット5」として市場へ再投入した。ジャン=リュック・ラガルデール率いるマトラは、ロモランタンの自社工場に生産拠点を集約。1966年にはボネの名を外して「マトラ ジェット5」および「ジェット6」へと呼称を改め、量産スポーツカー事業への本格参入を果たした。
車体には実用性と高速安定性を高める改修が施された。後部を約40cm延長して空気抵抗の低減を図るとともに、座席背後の荷室空間を拡充。トレッドの拡大や前後バンパー意匠の刷新も行われた。骨格には実績ある鋼板バックボーンフレームを継承し、繊維強化プラスチック(FRP)外板の組付精度を向上。四輪独立ダブルウィッシュボーン懸架や四輪ディスクブレーキを維持し、車両重量約700kg前後の軽量な車体を保った。
動力部には、ルノー製直列4気筒OHVユニットを座席背後に縦置きミドシップで搭載。標準仕様の「ジェット5」にはルノー・8 メジャー由来の排気量1,108ccユニットを備え、70psを発生。高性能版「ジェット5 S」には、ルノー・8 ゴルディーニ用のクロスフロー半球型燃焼室とツインウェーバー気化器を備えた1,108cc(94ps)を配分。のちの「ジェット6」では1,255cc(105ps)へと強化された。
手工業的であったルネ・ボネ時代に対し、マトラの製造管理と販売網の整備により生産台数は大幅に伸長。1968年に後継モデル「M530」へ交代するまでに約1,500台規模が世に送り出された。少量生産に喘いでいたフランス製ミドシップクーペに工業的な量産性と品質安定性をもたらし、航空宇宙企業が自動車産業へ本格進出する足がかりを築いた合理的な再編モデルである。

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