ランボルギーニ マルツァル(1967 イタリア)

ランボルギーニ

1967年3月のジュネーブ・モーターショーでベルトーネが発表した「ランボルギーニ マルツァル」は、本格的な4座パッケージと革新的なスタイリングを融合させた実験的コンセプトカーである。チーフデザイナーのマルチェロ・ガンディーニが手掛けた車体は、未来的なウェッジシェイプと全面ガラス張りの広大なキャビンが特徴。巨大なガルウィングドアを備え、乗降性と開放感を追求したこのワンオフモデルは、実用的なグランドツアラーの可能性を模索する意欲作として大きな反響を呼んだ。

動力部には、ミウラに搭載されていた4.0L V型12気筒の片バンクを流用した専用設計の排気量1,965cc水冷直列6気筒DOHCユニットを採用。3基のウェーバー製キャブレターを組み合わせ、175psのパワーを発生させた。大人4名分の座席空間を確保するため、変速機を車軸側に向けたうえでユニットを後車軸後方に横置きしたRRレイアウトを採用。後輪を駆動する独創的なパッケージングにより、極めて低い車高と居住性の両立を図った。

骨格にはミウラの鋼板モノコックを基礎としてホイールベースを120mm延長したシャシーが用いられ、足回りには前後ダブルウィッシュボーン式サスペンションと4輪ディスクブレーキを装備。外観および内装には六角形を反復させた幾何学的な造形モチーフが随所に散りばめられ、銀色の革張りシートとともに先鋭的な室内空間を演出した。また、広大なガラス面積による車内温度の上昇を防ぐため、当時としては先進的なエアコンディショナーが組み込まれた。

1967年のF1モナコGPでは、レーニエ大公とグレース王妃の手によってオープニングラップのパレード走行に使用され、国際的な知名度を高めた。量産化には至らなかったものの、マルツァルで提示された4座クーペの思想と流麗なプロポーションは、翌年登場する「エスパーダ」へと直接受け継がれた。ワンオフのショーカーにとどまらず、のちのランボルギーニのデザイン手法に多大な影響を与えた歴史的試作車である。

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