ダチア 1300(1969-2004 ルーマニア)

ダチア

1969年8月に登場した「ダチア 1300」は、ルーマニアの自動車メーカーであるダチア(現・ルノー傘下)が製造した大衆向け小型セダンである。同国のモータリゼーション推進を掲げた政府の方針のもと、フランスのルノーとの技術提携によって誕生。ベースモデルであるルノー 12のフランス本国発表とほぼ同時期に生産が開始され、当初はフランスから供給されるノックダウン部品の組み立てからスタートした。外観はルノー 12と共通のウェッジ基調デザインを踏襲し、近代的なスタイリングを備えた国民車として市場に迎えられた。

動力部には、ルノー製の排気量1,289ccの水冷直列4気筒OHV「クレオン・フォンテ」ユニットを採用。シングルキャブレターを組み合わせ、54psのパワーを発揮した。前車軸の前方にエンジンを配置する縦置き前輪駆動レイアウトをとり、4速マニュアル変速機を介して前輪を駆動。前輪のダブルウィッシュボーン式と後部のリジッドアクスルで構成された足回りは長いストロークを持ち、当時のルーマニア国内における未舗装路や荒れた路面環境に対して優れた走破性と耐久性を示した。

車体展開では基幹の4ドアセダンに加え、1973年には積載性に優れるステーションワゴン「1300ブレーク」や商用バンを追加。のちには独自のピックアップ仕様なども派生し、一般家庭から公用・商業輸送まで幅広い用途を支えた。1978年にルノーとのライセンス契約が終了したあとも部品の現地調達率を高めて自社生産を継続。1979年には丸型4灯ヘッドライトを備える改良型「1310」へと発展し、経済体制の変革期を経ても生産体制が維持された。

セダンおよびワゴンモデルは2004年まで、商用ピックアップ仕様は2006年まで製造が続けられ、シリーズ累計生産台数は190万台を突破した。構造の簡潔さゆえに整備が容易であり、部品供給や経済状況が逼迫した共産圏下においても確実な移動手段として国民に定着。約35年もの長きにわたりルーマニアの社会と産業を支え続けた、同国モータリゼーションの象徴的存在である。

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