1980年2月に登場した「ホンダ クイント」は、シビックとアコードの間を埋める中級車種として開発された5ドアハッチバックサルーンである。車名の「クイント」は音楽用語の「クインテット(5重奏)」に由来し、実用的な5ドアと5人乗りパッケージングを象徴させた命名であった。新設の「ホンダベルノ店」専売モデルとして投入。ノッチバック風の流麗なウェッジシェイプと大きなテールゲートを融合させ、居住性と積載性を両立させた。
動力部には、排気量1,602ccの直列4気筒SOHC「EP型」CVCC-IIエンジンを搭載し、(90ps/5,500rpm、13.5 kgm/3,500rpm)を発揮。希薄燃焼技術により、低公害性と実用域での良好な燃費性能を達成した。変速機には5速マニュアルおよびオーバードライブ付きホンダマチックを設定。足回りには4輪独立懸架のマクファーソンストラット式を採用し、前輪駆動の利点を生かした広い室内としなやかな乗り心地、素直な操舵応答性を実現した。
室内空間には分割可倒式後部座席を備え、乗車人数や荷物に応じた多彩なシート配置を可能とした。上位グレードにはサンルーフやパワーステアリングなど当時の上級装備を採用。欧州などの輸出市場では語源をそのまま冠した「ホンダ クインテット」を名乗ったほか、イギリスのBL社との提携に基づき、オーストラリア市場等では「ローバー クインテット」として供給されるなど国際協業の一翼も担った。
5ドアの機能性と軽快な走りを兼ね備えた意欲作であったものの、当時の国内市場では保守的な4ドアセダン需要が根強く、販売面では苦戦を強いられた。しかし、車名が示す5ドアハッチバックの合理的な設計思想は、1985年に全面刷新された後継モデル「クイント インテグラ」へと継承。後のインテグラシリーズ躍進の基礎を築いた過渡期の重要モデルとして位置づけられている。

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