1991年5月に登場した「ホンダ ビート」は、量産車として世界初となるミドシップ・フルオープンモノコックボディを採用した軽オープンスポーツカーである。軽自動車規格の限られた寸法の中で本格的なミドシップレイアウトを構築し、優れた車体剛性と後輪駆動ならではの卓越した旋回性能を追求した。日常域から扱いやすく、ダイレクトな操舵フィールを提供する新世代のマイクロスポーツとして企画された。
走りの心臓部には、ターボ過給に頼らない自然吸気の「E07A」型656cc直列3気筒SOHCエンジンを搭載。F1レース用エンジンの発想を採り入れた多連スロットル吸気システム「MTREC」を備え、鋭敏なスロットルレスポンスを実現した。自然吸気ながら軽自動車の自主規制上限となる64psを8,100rpmで発生し、8,500rpmのレッドゾーンまで澱みなく吹け上がる高回転特性が与えられた。
シャシー設計にも独自のこだわりが注がれた。前155/65R13、後165/60R14の前後異径タイヤや、NSXと同等の40mmストロークを持つ5速マニュアルを採用。4輪ディスクブレーキや4輪独立懸架を備え、ドライバーの居住性と操作性を確保するため、センタートンネルを左へ25mmオフセットさせる緻密なパッケージングが施された。
車両重量760kgの軽量な車体と高回転型自然吸気ユニットの組み合わせは、軽規格を超えた純粋な走りの歓びを具現化した。その妥協なきエンジニアリングは、往年のSシリーズから続くオープンスポーツの情熱を軽ミドシップとして結実させたものであり、のちのS660の登場にも連なる孤高の存在である。

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