1995年1月に登場した「インプレッサ リトナ」は、初代インプレッサのラインナップに加わった2ドアノッチバッククーペである。北米市場で先行していた2ドアボディを国内向けに導入したモデルであり、主に若い女性層やエントリーユーザーをターゲットに企画された。明るいトーンの専用ファブリックシートや日常での扱いやすさを重視し、1.5リッター(FF/97ps)と1.6リッター(4WD/100ps)の自然吸気SOHCエンジンを搭載。硬派なスポーツモデルとは対照的な、軽快で親しみやすいカジュアルクーペとして送り出された。
しかし、当時の日本市場におけるクーペ需要の後退や、ターボモデルが設定されなかったことが影響し、販売面では苦戦を強いられた。1996年秋のマイナーチェンジに伴い、「リトナ」はわずか1年半余りでカタログから消滅する。日本国内では短命に終わった2ドアボディだったが、北米市場では「インプレッサ クーペ」として堅調な販売実績を維持しており、この量産規模がのちに大きな転機をもたらすこととなる。
1997年、世界ラリー選手権(WRC)に改造範囲の大幅な緩和を認める「WRカー規定」が導入された。この新規定では同一車種系列であれば2ドア車体の採用が可能であり、連続12か月間に2,500台以上の車体生産実績が求められた。スバルとプロドライブは、開口部が少なく4ドアセダンを凌ぐ車体剛性を誇る2ドアシェルに着目。北米での量産実績によって公認条件をクリアしたこのクーペボディにEJ20ターボを収め、WRカー「インプレッサ WRC97」を完成させた。
この競技車両の開発と足並みを揃え、市販車でも2ドアの剛性を活かした高性能モデル「WRX タイプR STiバージョン」が並行開発され、WRC97のデビュー戦とほぼ時を同じくする1997年1月に発売された。さらに1998年にはWRCマニュファクチャラーズタイトル3連覇を記念した限定車「22B-STiバージョン」へと結実。女性向けの大衆クーペとして誕生したリトナの骨格は、北米市場の支えとラリーの要求が交差したことで、スバルの黄金期を象徴するスポーツモデルの礎となった。

画像ギャラリー






