1979年のジュネーブ・モーターショーで発表された「いすゞ アッソ ディ フィオーリ」は、イタリアの名門イタルデザインを率いるジョルジェット・ジウジアーロが手がけたコンセプトカーである。トランプのクラブのエースを意味する車名が与えられ、いすゞ自動車が117クーペの後継モデルを模索する中で、次世代の量産クーペ像を提示する実験作として誕生した。
車体構造にはFRジェミニのプラットフォームを流用しながら、極限まで段差を排した革新的なフラッシュサーフェス造形を具現化。外板とガラス面の段差を抑えた接着式ウィンドウや、格納式ワイパーを採用し、空力特性の向上と未来的なフォルムを両立させた。さらにフロントマスクには、作動時にカバーが上方へと持ち上がって前照灯が露出するセミリトラクタブル式ヘッドランプが組み込まれ、イタリアのデザインハウスによる先鋭的なウェッジシェイプが量産前提の寸法で見事に表現された。
室内空間においても、ステアリングホイールから手を離さずに主要機器を操作できる「サテライトスイッチ」をコラム両脇に配置するなど、独創的な人間工学設計が導入された。デジタル表示メーターと先進的な操作系が融合したコックピットは、従来の自動車デザインの常識を覆す先進性を誇った。
モーターショーで絶賛を浴びたこのショーカーは、異例なことに外観や内装の意匠をほぼ損なうことなく、1981年に量産車「いすゞ ピアッツァ」として市販化された。量産にあたって全幅や全高にわずかな寸法調整は施されたものの、ショーモデルの実験的意匠を量産ラインへそのまま昇華させた歴史的快挙として、世界の自動車デザイン史にその名を深く刻んでいる。

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