1984年に登場した「フォード シエラ XR8」は、南アフリカのツーリングカー選手権(グループ1)参戦を目的に、現地法人のフォード南アフリカが企画したホモロゲーションモデルである。ホモロゲーション取得に必要な200台を満たすため、ポート・エリザベス工場にて約250台が限定生産された。欧州仕様の3ドアクーペ「XR4i」とは異なり、南アフリカ市場で一般的であった5ドアハッチバック車体を基台に選定した点が特徴である。
動力部には、北米仕様のマスタングGTから流用した排気量4,942ccのOHV V型8気筒ユニットを搭載。4バレルのホーリー製キャブレターを組み合わせ、(219ps/4,750rpm、38.1 kgm/3,250rpm)の太いトルク特性を獲得した。変速機には5速マニュアル(ボルグワーナー製T5)を結合。大型エンジンの搭載と冷却効率向上を図るため、フロントグリルには開口部を広げた専用スリットが刻まれ、強化プロペラシャフトや強固なデフが組み合わされた。
足回りには、標準車比で前輪側50パーセント、後輪側40パーセント剛性を高めた専用強化スプリングを採用。制動系には4輪すべてにベンチレーテッドディスクを備え、前輪にはAPレーシング製4ピストンキャリパーを投入して減速性能を引き上げた。外装はホワイトの車体色にフォード モータースポーツのブルーラインをあしらい、後部にはXR4i譲りの上下2段式バイプレーンウイングとローナル製15インチアルミホイールを装着した。
実戦投入されたシエラ XR8は、BMW 745iやアルファロメオ GTV 3.0といった強力なライバル勢を相手に激戦を展開。0-100km/h加速6.95秒、最高速度231km/hという卓越した走力をサーキットおよび公道で発揮した。空力に優れた5ドアハッチバックの車体にアメリカンV8を押し込むという特異な手法は、南アフリカ独自のモータースポーツ規定が生んだ屈指のマッスルカーとして歴史に刻まれている。

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