1994年に公開された「フォード トランジット スーパーバン3」は、第3世代「トランジット」の宣伝プロモーションを目的に製作された超高性能ワンオフマシンである。1984年に登場した前作「スーパーバン2」をベースに大改修が施され、イギリスのシルバーストン・サーキットで初公開。商用バンの親しみやすい外観を纏いながら、中身はフォーミュラ1直系の純粋なレーシングマシンという過激なコンセプトを受け継いだ。
車体骨格には、前作から引き継がれたグループCカー「フォード C100」のアルミ製モノコックシャシーを採用。動力部には、F1世界選手権でベネトン等のマシンに搭載されていた排気量3.5Lのコスワース製水冷V型8気筒自然吸気ユニット「HB」をドライバー後方に縦置きするミドシップ配置で搭載した。約650hpの強大なパワーと超高回転域の鋭敏なレスポンスを誇り、ヒューランド製5速マニュアル変速機を介して後輪を駆動した。
外装は当時の第3世代トランジットを忠実に再現した軽量なグラスファイバー(FRP)製カウルへと全面刷新。親しみやすいフロントグリル形状を再現しつつ、ルーフ上部には巨大な空力スポイラーが備えられ、左右側面の大型エアインテークや後部アンダーディフューザーが高速走行時の強大なダウンフォースと冷却性能を確保。大径レーシングブレーキと専用ホイールにより、レーシングカーそのままの制動力を獲得した。
走行試験では最高速度約240km/h、0-100km/h加速を約3秒台で駆け抜ける驚異的な運動性を披露し、世界各地のモータースポーツイベントで圧倒的な存在感を放った。のちの時代にはメンテナンス性の改善を目的に3.0LのV型6気筒ユニットへの換装が行われたが、現在も英フォードの歴史的車両群として大切に動態保存され、モータースポーツの熱気と遊び心を体現する伝説として愛されている。
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