サーブのミドルクラスサルーンとして登場したのがサーブ99。この高出力版としてサーブは当初、99にトライアンフ製のV8 3.0Lを搭載する予定だった。しかし、オイルショックの影響などもあり、この計画は変更された。代わりに開発されたのが99ターボであった。搭載されたのは電子制御インジェクションを備えた直4 2.0L SOHCのサーブBエンジンで、この圧縮比を7.2:1に下げたうえでギャレットT3タービンを組み合わせた。エンジン出力は145馬力、24.0kgmとなっており、自然吸気に比べてそれぞれ23%、45%向上していた。この車がこれまでの量産ターボ車と異なる点は、小型のタービンと高性能なウエストゲートバルブにより、ターボラグは小さく抑えられ、低回転域(1500rpm)から十分なパワーを発揮する扱いやすさを持っていたことであり、そのパフォーマンスは市場から高評価を受けた。99ターボは当初3ドアハッチバックのコンビクーペのみに設定されていたが、のちにグループ2ホモロゲーションを獲得するために2ドアセダンにも設定された。

そして、サーブは2ドアセダンの99ターボをWRCへと投入した。1979年のスウェディッシュラリーでは、前輪駆動のトラクションとターボのハイパワーを生かし、スティグ・ブロンクビストが初優勝を遂げた。これはWRC史上初めてのターボ車による優勝であった。

V8エンジン搭載のサーブ99について
サーブ99の高出力版には、当初このトライアンフ スタッグ用3.0L V8エンジンが搭載される予定だった。これが計画通り進んでいれば、V8縦置き前輪駆動のサーブ99が誕生していたはず。このレイアウトはまるで戦前のコードを彷彿とさせるところだが、それはサーブらしい独自の世界観を持つ車になっていたかもしれない。

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