IKCO デナ(2015-present イラン)

イラン

2015年に登場した「デナ」は、イラン最大の自動車メーカーであるイランホドロ(IKCO:Iran Khodro Company)が、先代のサマンドをベースに開発したフラッグシップセダンである。同社が掲げる「ナショナルカー」のプレミアム化を目指し、旧来の「プジョー405」由来のプラットフォームを継承しつつも、内外装の全面刷新によって現代的な高級感を追求した。イラン国内の産業自立を象徴するモデルであり、国民にとっては現実的な価格で手に入る最上級車としての地位を不動のものとしている。

パワーユニットの核となるのは、プジョー製をベースとしてドイツのFEV社と共同開発を行った「EF7」型1.7L直列4気筒エンジンである。自然吸気仕様に加え、後に最高出力150馬力を発生するターボ仕様も追加された。特に自然吸気仕様はガソリンと天然ガス(CNG)を併用できる「デュアルフューエル」システムを前提に設計されており、独自のエネルギー事情を持つイランにおいて高い実用性を誇る。当初は5速MTのみであったが、改良型の「デナ プラス」では6速ATが設定され、長距離移動の多いユーザーに向けた洗練された動力性能を実現した。

外観デザインは、サマンドの面影を払拭するように、LEDデイタイムランニングライトを備えた鋭いヘッドライトや、大型のフロントグリルによってアグレッシブな表情へと進化した。室内空間は「プレミアム」の呼称に相応しく木目調パネルが配され、イランの伝統的な好みに合わせた豪華な演出がなされている。また、クルーズコントロールを備えた多機能ステアリングも装備された。2017年に加わった「デナ プラス」では、サンルーフやサイドエアバッグが標準化され、安全性とホスピタリティの向上が図られた。

登場以来、デナはイラン国内の公用車としても広く採用され、名実ともに同国の顔となった。基本設計の古さに起因する衝突安全性の限界や、部品供給の不安定さによる品質のばらつきといった課題は残るものの、過酷な環境下でも機能し続ける強靭な耐久性は、中東や西アフリカといった輸出先でも根強い支持を集めている。

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