インフィニティ Q60(2016-2022 アメリカ)

インフィニティ

2016年に導入された2代目インフィニティQ60は、日産のプレミアムブランドが北米市場を中心に展開した2ドアクーペである。このモデルはQ50(日本名:スカイライン)のプラットフォームをベースに開発されていた。発売当初より後輪駆動のほかにインテリジェントAWD(全輪駆動)を各グレードに設定可能としており、全天候型グランドツーリングカーとしての立場を強固なものとした。アウディ A5やBMW 4シリーズといった欧州のプレミアムクーペを競合に見据えた、グローバル市場向けのモデルであった。

エンジンは、メルセデスベンツ製の2.0L 直列4気筒ターボと、自社開発の3.0L V型6気筒ツインターボ(VR30DDTT)が用意された。特に上位グレードのレッドスポーツ400に搭載されるVR30DDTTユニットは、最高出力405馬力、最大トルク475Nmを発生し、電子制御による「インテリジェントAWD」を介して路面に駆動力を伝達する。このAWDシステムは、路面状況に応じて「0:100」から「50:50」の間で前後トルクを最適に配分し、走行安定性を高める設計となっている。

車両設計には、世界初のステア・バイ・ワイヤ技術である「ダイレクト・アダプティブ・ステアリング(DAS)」の改良型や、電子制御サスペンション「ダイナミック・デジタル・サスペンション(DDS)」が採用された。外観デザインはクレセントカットCピラーやダブルアーチグリルといった独自の意匠を基軸とし、空力性能に配慮したサイドベントをフロントフェンダーに備えている。室内には、上下2画面のタッチパネルで構成されるエンターテインメントシステムを配置し、高度なコネクティビティと実用的な操作性を両立させた。

2022年の生産終了まで、Q60はインフィニティの技術的象徴としての役割を担った。2.0Lターボから400馬力を超えるV6ターボまで、駆動方式を問わず多様な選択肢を提供した点は、市場における本車の柔軟な競争力を支えた要因といえる。日本国内での正規販売は行われなかったが、本車で熟成されたVR30DDTTエンジンや電子制御技術は、後のフェアレディZ(RZ34)のメカニズムへ継承されることとなった。

それまでの流れであればスカイラインクーペとなると思われた2代目インフィニティQ60は、ついに日本市場に投入されることは無かった。ただし、右ハンドル仕様が用意されていなかったわけではなく、イギリス、オーストラリア、マレーシアや南アフリカなど、実はいくつもの国で販売されていた。

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