日産 スカイライン オーテックバージョン(1992-93 日本)

日産

桜井眞一郎氏が率いるオーテックジャパンが手掛けた特別なR32スカイライン。それはスポーツカーを卒業した大人のためのセダンというコンセプトのもと、GT-RともGTS-tとも全く違う性格が与えられていた。エンジンはGT-R用のRB26DETTからターボを外して自然吸気としたRB26DEを搭載(ごく少数RB20DET搭載モデルも存在)。スペックは220馬力、25.0kgmと控えめではあったが、カムシャフト、鍛造ピストン、ステンレス製等長エキマニなどはこの車の為だけに作られたもので、そのエンジンの吹け上がりは格別だった。また、アルミ製ボンネットフードやドリルドブレーキローターなど、随所にGT-R用の部品も使用された。駆動方式はアテーサET-Sによる四輪駆動、トランスミッションは4速オートマチックのみが組み合わされた。ボディカラーは専用色、イエロイッシュグリーンパールメタリックのみの設定。オーテックバージョンは、スペック上だけでは見えてこない官能性能にも重きを置いて開発された、桜井眞一郎氏の魂が宿る車だった。

GT-Rという車は本来、レースでの勝利だけを目指した車では無かった。好きな人だけが乗ってくれればよい、男らしい究極のGTがその正体だった。ハコスカ以降はマーケティングが優先し、ダウンサイズを希望する桜井氏の思いとは裏腹に大きく重くなっていくスカイライン。桜井氏が開発主管を外れたR32でようやく、コンパクトで引き締まったスカイラインへと回帰した。それはまるでハコスカのようなスカイライン。そして桜井氏はR30開発時からスカイラインの四輪駆動化を構想していた。「馬は前足と後足を使って走っていく。自動車としても四駆が優れているのは当然でした。」そう述べていた。パズルのピースは揃った、アテーサET-Sがまさにその四輪駆動。Gr.Aツーリングを制するためのGT-Rが光り輝いた最中にひっそりとしかし拘りを持って生み出されたオーテックバージョンが、桜井氏にとっての本当のGT-Rだったのかもしれない。

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