1969年4月に1970年型として登場した「フォード マーヴェリック」は、北米市場で急伸していたフォルクスワーゲン・ビートルや日本製の小型車に対抗すべく企画されたコンパクトカーである。車名は「焼き印のない仔牛(異端者)」に由来し、1,995ドルという戦略的な低価格設定と簡潔な設計を武器に、若年層やエントリー層の需要を開拓した。
車体構造はフォード・ファルコンのシャシーを流用・短縮した2ドアセダンとして始動。1970年春には専用フード等を備えた「グラバー」パッケージが先行設定され、1971年型で正式グレードへ昇格するとともに、ホイールベースを延長した実用的な4ドアセダンが新設された。簡素なサスペンションと優れた居住性により、幅広い購買層の支持を集めた。
パワートレーンは直列6気筒「スリフトパワー」を基本とし、当初は2.8リッター(105hp)と3.3リッター(120hp)を設定。1970年春に4.1リッター(145hp)直6、1971年型で5.0リッター(210hp)の「ウィンザーV8」が加わった。変速機には3速MTや3速ATが組み合わされ、前輪独立懸架と後輪リーフリジッドによる素朴で堅牢な機構が低廉な維持費と実用性を支えた。
発売初年度だけで約58万台を販売し、初代マスタングの記録に迫る大ヒットを達成。1973年の第1次オイルショック下でも経済的な移動手段として堅調な販売を維持し、後継の「フェアモント」へ道を譲る1977年まで生産された。輸入小型車の攻勢に対する防波堤として大きな商業的成功を収め、1970年代の北米大衆車市場を代表する1台となった。

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