デ・トマソ ヴァレルンガ(1964-1968 イタリア)

デ・トマソ

アルゼンチン出身の元レーシングドライバーであるアレッサンドロ・デ・トマソが設立した同社にとって、初の市販乗用スポーツカーとなるのが「デ・トマソ ヴァレルンガ」である。モデル全体の初演は1963年のトリノ・モーターショーに遡り、当初はアルミ製スパイダーおよびベアシャシーとして公開された。その翌年となる1964年の同ショーにおいてクローズドボディのクーペが発表され、レーシングカーの構造をそのまま公道用モデルへ転用するという野心的な設計思想が示された。車名はイタリアのローマ近郊にあるヴァレルンガ・サーキットに由来している。

車体構造の最大の特徴は、プレス鋼板を用いたバックボーンフレームを採用している点である。この軽量かつ高剛性な中央骨格の後方にエンジンとトランスミッションを搭載し、それ自体をサスペンションの支持部材として活用する手法は、純粋な競技車両に極めて近い工学設計であった。外装のスタイリング原案はイタリアの車体工房であるフィッソーレのフランコ・マイナが手がけ、初期のアルミ製プロトタイプ数台も同社で制作された。しかし、量産型に採用されたガラス繊維強化プラスチック(FRP)製ボディの製造と組み立ては、のちにデ・トマソ傘下となる名門カロッツェリアのギアが担当している。

座席の背後に搭載された動力源は、英フォードの「コーティナ」用1.5リッター直列4気筒OHVエンジン(1,498cc)をベースとしている。ウェーバー製ツインキャブレターなどでチューニングが施され、104psを発生した。変速機には、フォルクスワーゲン製のケーシングを流用しつつ内部に競技用ギアを組み込んだ専用設計の4速マニュアルが組み合わされている。わずか726kgという極めて軽量な車体により、最高速度は215km/hに達するとされた。

先進的な設計と卓越した運動性能を備えていた一方で、小規模な生産体制やフレームの剛性不足といった技術的課題もあり、総生産台数はプロトタイプを含めても50台強にとどまった。しかし、この車で培われた車体中央にエンジンを配置するパッケージングやバックボーンフレームの技術は、のちにフォードとの提携から生み出される傑作「マングスタ」へと直接的に受け継がれ、スポーツカーメーカーとしてのブランドの確固たる礎を築いた。

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