1964年に製作された「ポルシェ 901 カブリオレ」は、のちに名車911へと発展する新世代スポーツカーのオープン仕様として試作された希少なプロトタイプである。前作「356」で高い人気を誇ったオープントップ需要を継承すべく企画され、カルマン社へ委託してわずか1台のみが製造された。
動力部には、新開発された2.0リッター空冷水平対向6気筒SOHCユニットを車体後部に搭載。ソレックス製キャブレターとの組み合わせにより130psを発生し、新世代に相応しい動力性能を備えていた。しかし、モノコック骨格から屋根を取り払ったことで車体剛性の確保が難航し、走行時のねじれや操縦安定性の面で大きな課題に直面した。
さらに最大の輸出先であるアメリカ市場において、オープンカーの横転時に乗員を保護する安全基準が厳格化されるとの観測が浮上。十分な剛性と安全性を両立できないと判断された結果、完全なオープン構造での市販化計画は凍結を余儀なくされた。この難題を克服する解決策として、強固な金属製ロールバーを備えた安全なオープン構造「タルガ」が生み出される契機となった。
市販化には至らなかったものの、唯一製作されたシャシーは現存し、911の歴史における貴重なミッシングリンクとして語り継がれている。完全なカブリオレが量産モデルとして設定されるのは1982年を待つこととなるが、オープン化への模索がタルガという独創的形態を結実させた点において、後世に多大な影響を残した歴史的試作車である。

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