1969年に登場した「ポルシェ 914」は、ポルシェとフォルクスワーゲン(VW)が共同で企画・開発した2シーターのオープンスポーツカーである。高価格化した911の下を埋めるエントリーモデルを急務としたポルシェと、カルマンギア後継となるイメージリーダーを求めたVWの利害が一致し、両社首脳の紳士協定により計画が始動した。開発途中でVW会長ハインツ・ノルトホフが急逝し、権利関係の再交渉から合弁販売会社「VW-ポルシェ」が設立されるなど曲折をたどった。欧州市場では「VW-ポルシェ」名義で展開された一方、北米市場や日本国内ではブランドイメージを重視し「ポルシェ」の名で販売網へ投入された。
車体の製造および4気筒モデルの最終組み立てはカルマン社へ委託され、6気筒モデルの最終組み立てはポルシェのツッフェンハウゼン工場が担った。座席直背後にエンジンを配置するミドシップレイアウトを採用し、優れた前後重量配分と低重心を確保。脱着式ルーフを備えるタルガトップ構造を取り入れ、外したルーフパネルを後部荷室へすっきりと格納できる実用性を備えた。足回りには前輪にマクファーソンストラットとトーションバー、後輪にセミトレーリングアームとコイルスプリングを組み合わせ、前後に独立した荷室を確保するなど、優れた旋回性能と日常の実用性を高い次元で両立させた。
動力部には、VW製をベースとする排気量1,679ccの空冷水平対向4気筒OHVにボッシュ製電子制御燃料噴射「Dジェトロニック」を組み合わせ、(80ps/4,900rpm、13.5 kgm/2,700rpm)を発揮。さらに、911T用を移植した排気量1,991ccの空冷水平対向6気筒SOHCにウェバー製キャブレターを装着した高性能版「914/6」も用意され、(110ps/5,800rpm、16.0 kgm/4,200rpm)を発生した。加えて1972年には、高価格により生産終了となった914/6の代替として、排気量を拡大した新設計の排気量1,971cc空冷水平対向4気筒OHVを積む「914 2.0」を投入。(100ps/5,000rpm、16.0 kgm/3,500rpm)を発揮し、6気筒に迫る動力性能と手頃な維持性を両立させた。
6気筒を積む914/6は車体調達費用の高騰により約3,300台の生産にとどまり短期間で姿を消したものの、手頃な4気筒モデルや改良型の914 2.0は北米市場を中心に好調な需要を獲得。扱いやすい動力特性と優れた操舵応答性が高く評価され、1976年の生産終了までにシリーズ全体で約11万8,000台が製造された。量産ミドシップスポーツの先駆的存在として商業的な成功を収め、その役割を水冷エンジンを前方に搭載する新世代の「924」へと引き継いだ。

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