日産 インフィニティ Q45(1989-1997 日本)

日産

1989年10月に発表された「日産 インフィニティ Q45」は、北米市場向けに新設された高級車ブランド「インフィニティ」の最上級サルーンとして開発され、日本市場へも投入された大型高級セダンである。「ジャパン・オリジナル」を掲げ、欧米の模倣ではない独自の高級車像を追究。伝統的な高級車で通例だった大型メッキグリルを排したグリルレスフロントを採用し、中央に七宝焼きの大型エンブレムを配置した。当時の贅を尽くした象徴的な装備として、約52万円で販売された18金製の純正マスターキーがディーラーオプションとして用意された点も特筆される。

動力部には、排気量4,494ccの90度V型8気筒DOHC32バルブ「VH45DE型」を搭載。開発段階では300psの達成を目標として設計が進められたが、当時の280馬力自主規制に基づき(280ps/6,000rpm、40.8 kgm/4,000rpm)に抑えて発表された。変速機には油圧制御を進化させた電子制御4速オートマチックを組み合わせ、後輪を駆動。大排気量多気筒ユニットならではの高い静粛性と、幅広い回転域にわたりフラットなトルク特性を両立させた。

シャシーには卓越した接地性を発揮する4輪マルチリンク式サスペンションを基本とし、電子制御4輪操舵機構「スーパーHICAS」を配備。さらに、路面入力に応じて瞬時に車体姿勢を水平に保つ油圧式アクティブサスペンション仕様を設定した。従来のコイルスプリングやスタビライザーを排し、各輪に設けた油圧アクチュエーターをコンピューター制御する先進機構により、旋回時のロールや加減速時のピッチを能動的に抑制。大柄なセダンでありながらフラットな姿勢変化と優れた運動性能を両立させた。

従来の威圧感を抑えた前衛的な意匠や高い走行性能は自動車愛好家から注目を集めたが、保守的な高級車購買層からは押し出し感の不足を指摘され、1993年の仕様変更では格子状のフロントグリルが追加された。独自の美意識を反映した内外装の仕立てや先駆的な油圧アクティブサスペンション制御、大排気量V8の動力性能は、日産の技術力を世界に示す契機となった。既存の既成概念に挑んだ野心作として、日本の自動車技術史に独自の足跡を残している。

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