ルノー エスパス(1984-1991 フランス)

ルノー

1984年に登場した「ルノー エスパス」は、欧州におけるモノスペース型MPVの先駆となったモデルである。構想の発端はタルボ マトラ ランチョの後継を模索していたマトラ社にあり、当初は提携関係にあったPSA(プジョー・シトロエン連合)の傘下で開発が着手された。試作車「P18」ではプジョー・305の横置き駆動系やフロア構造を基盤として設計が進められたが、経営難に直面したPSAが市販化を断念。マトラはこの計画をルノーへと持ち込み、同社ロモランタン工場での受託生産として日の目を見ることとなった。

ルノーへの計画移管に伴い、開発呼称「P23」では駆動方式がルノー式のエンジン縦置き前輪駆動へと変更された。これに対応するため車体前部のノーズが延長され、冷却用ラジエターもエンジン前方から側面へと移設される構造変更が施された。骨格には溶融亜鉛メッキ槽に浸漬処理を行った鋼板製スペースフレームを採用し、その上へ熱硬化性グラスファイバー複合材の外板を締結。高い防錆性能と軽量化を両立し、車両重量は約1,200kg前後に抑えられた。前面傾斜の強いワンモーション形状により、Cd値0.32という優れた空力特性も達成した。

動力部には、車体前方に縦置き配置されたドゥヴラン製の2.0リッター直列4気筒SOHCガソリンユニットを搭載。キャブレター仕様で110psを発生し、5速マニュアルを介して前輪を駆動した。のちの改良では燃料噴射仕様による120psユニットや2.1リッターターボディーゼルが追加され、さらにはビスカスカップリングを用いた四輪駆動仕様「クアドラ」も設定されるなど、多様な走行要求に応える展開が進められた。

室内には前席が180度回転して後席と対面可能なシート機構や、床面から取り外しおよび折りたたみが自在な独立座席を採用。移動空間をリビングのように活用できる独創的なユーティリティを提示した。発売初月はわずか9台の登録にとどまるなど当初は苦戦したものの、実用性の高さが浸透すると欧州全域で支持を拡大。1991年の世代交代までに約19万台が生産され、新たな多用途車の市場を開拓した一台となった。

PSA傘下で進められた開発モデル『マトラ P18』では、プジョー製の横置きユニットを前提としていたため、車体前部のオーバーハングは短く設計されていた。しかし計画がルノーへ移管されて以降は、同社の縦置き駆動レイアウトに適合させるためフロントノーズが延長され、冷却用ラジエターもエンジン前方から側面へと移設される構造変更が施された。

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