デ・トマソ ドーヴィル(1971-1985 イタリア)

デ・トマソ

1970年のトリノ・モーターショーで発表され、1971年に発売された「デ・トマソ ドーヴィル」は、アレッサンドロ・デ・トマソが高級サルーン市場への参入を掲げて開発した4ドア大型グランツーリスモである。ジャガー XJやメルセデスベンツ 300SEL 6.3などに対抗すべく企画され、スタイリングはカロッツェリア・ギアに在籍していたトム・チャーダが担当。ジャガーを想起させる伸びやかなプロポーションと端正な3ボックス造形を特徴とし、洗練された品格を備えた。

フロントに配置された動力部には、フォード製の排気量5.8L(5,763cc)水冷V型8気筒OHV「351クリーブランド」ユニットを採用。大型4バレルキャブレターを備え、発売初期の公式カタログ値として300ps/5,400rpmのパワーと46.2kgf・mの最大トルクを明記した。組み合わされる変速機はフォード製3速オートマチックを主体とし、ZF製5速マニュアルも選択可能とした。大排気量V8の豊かなトルクにより、車重約1.8tの車体を力強く加速させた。

シャシーには前後ともにダブルウィッシュボーン式による4輪独立懸架を採用。後部サスペンションには左右それぞれにツインスプリングとダンパーが配され、ディファレンシャル側に配置されたインボード式のベンチレーテッドディスクブレーキを備えた。この洗練された足回り構成は高速巡航時の接地性と重厚な乗り心地を両立。のちにマセラティ クアトロポルテIIIの足回り設計へ直接受け継がれるなど、高い工学的完成度を誇った。

車内には上質な天然皮革やウッドパネルがふんだんに用いられ、イタリア伝統の工芸的贅沢が息づく移動空間が仕立てられた。1985年までの長期にわたり生産されたものの、手作業を中心とする製造工程ゆえに総生産台数は244台(および特注ステーションワゴン1台)にとどまった。希少性の高いハンドメイドサルーンとして、デ・トマソの技術的野心と高級サルーン市場への挑戦を体現するモデルである。

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