1973年に登場した「いすゞ ステーツマン デ・ビル」は、GMとの資本提携を背景に、最上級プレステージサルーンとして導入された大型高級セダンである。トヨタ センチュリーや日産 プレジデントが占有していた官公庁・企業重役向けのショーファードリブン市場への参入を目指し企画された。自社開発の投資を抑えるため、豪州GM子会社のホールデンが製造していた「ステーツマン デ・ビル(HQ系)」をベースモデルに選定。右ハンドル完成車を輸入販売する手法が採られた。
車体は全長5,029mm、全幅1,885mm、ホイールベース2,896mmに及ぶ大柄な体躯を持ち、伸びやかなプロポーションを特徴とした。角型ヘッドライトと大型クロームグリルが重厚な風格を演出し、車内は厚手のモケットシートや木目調パネルで仕立てられた。パワーステアリングやパワーウインドウ、独立式エアコンなど、当時の日本市場では先進的であった快適装備を標準搭載し、高い居住性を誇った。
フロントに配置された動力部には、排気量5,044ccの水冷90度V型8気筒OHVユニットを搭載。4バレルキャブレターを備え、240psのパワーと公式数値である43.5 kgmの最大トルクを発生させた。変速機にはコラムシフト式のGM製3速オートマチック「トライマチック」を組み合わせ、高速巡航時の静粛な定速走行を実現。足回りには前輪ダブルウィッシュボーン式、後部に4リンク式サスペンションを採用し、重厚な乗り心地を具現化した。
しかし、発売直後の第1次オイルショックによる需要激減や、ブランド浸透の遅れから販売は極めて低迷した。さらに1975年以降の厳しい排出ガス規制への適合が困難となったことも重なり、約2年後の1975年に輸入販売を終了。総登録台数は約240台余りにとどまった。短期間の展開に終わったものの、GMとの提携を活用していすゞが最上級車市場の開拓に挑んだ歴史を伝える意欲作である。
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