1979年に発表された試作車「ブラショヴィア」を端緒とする「ダチア 1310スポーツ」および発展型の「1410スポーツ」は、実用セダンである1310をベースに開発された2ドアクーペである。共産党体制下のルーマニアにおいて若年層やモータースポーツ向けのスポーティモデルを求める声に応え、ブラショフの工場で車体改修と生産を担当。1983年から本格的な量産が開始され、同国で唯一量産された乗用クーペとして独自の存在感を放った。
動力部には、ルノー由来の水冷直列4気筒OHV「クレオン・フォンテ」ユニットを搭載。「1310スポーツ」には排気量1,289cc(54ps)が積まれ、のちに追加された上級版「1410スポーツ」には排気量を拡大した1,397cc(65ps)が採用された。前車軸の前方にエンジンを配置する縦置き前輪駆動を踏襲し、変速機には4速マニュアル、のちの1410には5速マニュアルを組み合わせた。軽量な車体と相まって、ベースセダンを上回る活発な走行特性を発揮した。
車体構造には限られた資源下での創意工夫が凝らされた。全高はセダンから約80mm低められ、後部ピラーを大きく前傾させたファストバック調の造形を採用。後部ウィンドウには専用ガラスの新規金型製作を避けるため、フロントウィンドウを転用・加工して装着する特異な工法がとられた。また、初期にはホイールベースを200mm短縮した専用の短いドア仕様が製造されたが、後期には製造工程の効率化を図るため、セダンの前部ドアと標準ホイールベースを流用した仕様へと移行した。
1983年から1992年までの期間に約5,140台が生産された。一般販売にとどまらず、ルーマニア国内のラリー選手権にも多数投入され、過酷な実戦を通じて競技ドライバーの育成に寄与。物資不足と計画経済の制約を受けながらも、現地技術陣の実用的な設計思想と情熱によって形作られた稀有な東欧製クーペとして、同国のモータリゼーション史に特異な足跡を残した。


ダチアのクーペモデルは、ルーマニア国内のモータースポーツイベントで活躍した。中でもニク・グリゴラスがルノー5ターボの活躍に触発されて製作した、ダチア スポーツターボは200馬力以上を発生するモンスターダチア。ルーマニア国内のレースで連勝を重ねた。

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