ザガート ホンディーナ(1970 イタリア)

ザガート

1969年のトリノ・モーターショーでザガートが発表した試作車「ザンザーラ」の発展型として、1970年に公開された小型オープンモデルが「ザガート ホンディーナ」である。若年層を想定したコンセプトから「ヤングスター」の副名称も与えられた。フィアット 500をベースとしたザンザーラの高い反響を受け、イタリアにおけるホンダの輸入元であったモトアウトの働きかけを契機に、軽自動車「N360」の車台を活用して開発。当時ヨーロッパで流行の兆しを見せていたビーチカーの思想を、日本の優れた小型大衆車コンポーネントと融合させた試みであった。

車体意匠はザンザーラの造形思想を色濃く受け継ぎ、屋根やドアを持たない極めて開放的なオープンスタイルを採用。乗員の安全性を高める堅牢なロールバーを座席後方に立ち上げ、乗降性を考慮した深いサイドシル形状を取り入れた。室内には砂や水気に強い耐候性シートや簡潔な計器盤が配置され、リゾート地や海岸線でのアクティブな用途を想定した機能本位のパッケージングが貫かれた。

動力部には、ベース車両であるN360から受け継いだ排気量354ccの空冷直列2気筒SOHCユニットを搭載し、4速マニュアル変速機を介して前輪を駆動した。後部にエンジンを搭載していたザンザーラに対して前輪駆動レイアウトを採用したことで、床面を低く平坦に保ち、小柄な車体寸法ながら足元空間や実用的な積載性を確保。軽量な車体構造とも相まって、日常移動からレジャー用途まで軽快にこなす機動性を実現した。

若者の自由なライフスタイルを具現化した意欲的なレジャービークルとして注目を集めたものの、本格的な市販化には至らず試作モデルの域を出ることはなかった。しかし、ザンザーラから始まった小型大衆車のシャシーを活用した車体提案は、1970年代初頭のカロッツェリアが示した新たな市場開拓の足跡として、デザイン史において独自の存在感を保っている。

これはフィアット 500をベースとしたザンザーラ。ホンディーナはこのコンセプトをホンダ製パワートレーンに置き換えて制作されたオープンモデルだった。

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