1965年に発表された「ルノー 16」は、中型ファミリーカーの枠組みに革新的な実用構造を導入した前輪駆動の5ドアハッチバックサルーンである。ノッチバックの3ボックスセダンが主流を占めていた時代において、大型テールゲートとキャビンを一体化した2ボックス形状を採用。優れた居住性と多目的な積載能力を両立した設計思想が高く評価され、1966年のヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを獲得した。
車体設計における最大の特長は、多彩な可変性を備えたシート機構にあった。後部座席は前後のスライドや前倒し、取り外しに加え、前席と連結させてフラットな就寝空間を作り出すなど、7通りに及ぶシートアレンジが可能であった。この機能的な荷室空間と乗員重視のパッケージングは、現代に至るハッチバック実用車の先駆的な形態としてヨーロッパ全域で高い支持を獲得し、約15年間にわたり長期生産された。
動力部には、アルミ製ブロックを持つ排気量1,470ccの水冷直列4気筒ユニット(55ps/5,000rpm、10.8 kgm/2,800rpm)をキャビン寄りに配置。1968年には排気量1,565ccでクロスフロー構造の「TS」(83ps)を追加し、1973年には排気量を1,647ccへと拡大して5速マニュアル変速機を備えた最上級仕様「TX」(93ps)を投入した。変速機を先行配置する前輪駆動方式のもとで動力性能を段階的に強化し、高速巡航能力を高めた。
懸架装置には前後ともにトーションバースプリングを用いた4輪独立懸架を採用。後輪側は車幅方向に伸びるトーションバーを前後に並列配置する構造としたため、左右でホイールベース長が約70mm異なる(左2,650mm、右2,720mm)という特異な設計が施された。この長いストロークを活かした足回りが優れた路面追従性と柔らかい乗り心地を実現し、フランス車特有のしなやかな走行性能を確立した。

画像ギャラリー















