ナチ政権下のドイツでは食料の自給自足に重きを置いていたが、農業従事者の不足が問題となっていた。この対策として、ヒトラーがフェルディナント・ポルシェに依頼したのが民衆向け小型トラクター(フォルクストラクター)であった。最初に製作されたのがタイプ110と呼ばれるもので、空冷2気筒ガソリンエンジンを車体中央に搭載した簡素な作りとなっていた。フォルクストラクターはこの後、さまざまなエンジンや農業用アタッチメントの実験開発が行われており、ドイツ労働戦線(DAF)では年産10~30万台の生産をもくろんでいた。しかし、1939年のドイツ軍によるポーランド侵攻に端を発した第二次世界大戦の勃発により、開発は頓挫。フォルクストラクターが世に出ることはなかったが、ここでの開発経験はのちに生かされた。戦後しばらくして、ポルシェの名が冠されたトラクターが量産されることとなったのである。

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