アウディ RS2 アバント(1994-1995 ドイツ)

アウディ

1994年に発表された「アウディ RS2 アバント」は、実用的なステーションワゴンに純スポーツカー級の運動性能を融合させた高性能車である。アウディの頂点に君臨する「RS」の称号を掲げた最初の市販モデルであり、当時経営の多角化を模索していたポルシェとの共同開発によって誕生した。開発プロジェクト「P1」のもと、基礎骨格にはアウディ 80アバント(B4型)を採用。開発から最終組み立てに至る実務がポルシェに委託され、かつてメルセデスベンツ 500Eを手がけたシュトゥットガルトのツッフェンハウゼン工場(ロッセ・バウ)のラインを用いて生産された。

外観および足回りには、ポルシェの市販スポーツカー用コンポーネントが惜しみなく投入された。17インチの「カップ」ホイールや流線型ドアミラー、前部バンパー内の灯火類にはポルシェ 911(993型)や968の部品を採用。制動装置にはブレンボ社と共同開発された「PORSCHE」ロゴ入りの4ピストンキャリパーと大径ベンチレーテッドディスクを装備した。専用エンブレムにもポルシェの名が誇らしげに刻まれ、外見からも特別な血統を明確に主張した。

動力部には、2.2リッター(2,226cc)直列5気筒20バルブターボ「ADU」ユニットを縦置きに搭載。ポルシェの手により大型ターボチャージャーや大容量インタークーラー、専用カムシャフトが組み込まれ、過給圧を高めて315psの動力を発生した。6速マニュアルとトルセン式センターデフを備えたクワトロシステムを組み合わせ、当時のメーカー公式値として時速100km到達まで5.4秒と発表された一方、有力自動車メディアの実測テストでは4.8秒という驚異的な加速性能を記録した。

日常的な積載性と過激な走行性能を高い水準で両立させた設計は市場に大きな衝撃を与え、当初計画の約2,200台を大幅に上回る2,891台が1995年までに生産された。家族を乗せて荷物を運べるワゴンでありながら、並み居るスポーツカーを凌駕する速さを備えたこのモデルは「ハイパースポーツエステート」という新たな領域を確立。のちのアウディ RSシリーズへと連なる高性能車の系譜を決定づけた金字塔である。

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