シュコダ フェラート(1981 チェコスロバキア)

シュコダ

1981年に公開されたチェコスロバキアのSF映画『フェラートの吸血鬼』の劇中車として製作された「シュコダ フェラート」は、1971年の試作車「1100スーパースポーツ」を大幅に改修したカスタムスポーツカーである。ドライバーの生体エネルギーを燃料として走る架空の競技車両という設定に合わせ、映画美術家のテオドール・ピステックがデザインを監修。白を基調とした流麗なプロトタイプから、漆黒のボディを纏う不気味で先鋭的な姿へと劇的な変貌を遂げた。

車体造形には大規模な改修が加えられた。特徴的だったノーズの格納式6灯ライトは廃止され、角型の固定式ヘッドライトを奥まった位置に配置。後部には当時のグループ5規定を想起させる巨大な固定式ウイングがそびえ立ち、黒塗りの外装には鮮烈な赤のピンストライプが施された。テールライトには当時の量産車である105/120シリーズの部品が流用されたが、キャノピー全体が前方に跳ね上がる独特の乗降機構は維持され、劇中の世界観を際立たせた。

シャシーと駆動系は試作車の設計を継承。後車軸の前方にエンジンを配置する後部ミドシップレイアウトをとり、動力部には競技用ラリー車由来の水冷直列4気筒OHVユニットを搭載した。キャブレターの最適化等により100ps超のパワーを発生させ、4速マニュアル変速機を介して後輪を駆動。FRP製の軽量な車体構造と低い重心設計により、劇中の走行シーンにおいても軽快で俊敏な運動性能を発揮した。

映画の公開とともに「フェラート」の名はカルト的な人気を博し、東欧圏における伝説的なアイコンとなった。撮影終了後も元の白い試作車に戻されることはなく、その圧倒的な知名度と独創的な造形から劇中仕様のまま保存される方針が決定。現在もムラダー・ボレスラフにある同社公式博物館の重要展示車両として、モータースポーツの技術と映画芸術が交錯した稀有な遺産として大切に保管されている。

関連ブログ

シュコダ 1100スーパースポーツ(1971 チェコスロバキア)
1971年に試作車として発表された「シュコダ 1100スーパースポーツ(開発コードタイプ724)」は、チェコスロバキアのAZNP(現シュコダ・オート)がクヴァシニ工場で開発した実験的スポーツカーである。量産クーペ「110 R」の主要構成部品…

画像ギャラリー

タイトルとURLをコピーしました